woodenvalleyのブログ

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ルロイ修道士は実在した

ルロイ修道士は実在した人物である確証はない。

握手(井上ひさしさんの名著)の中の登場人物である彼は、自身の死期が迫っていることを知り、知人たちに別れの挨拶まわりをする。対面した際には、自分の病気については一切触れず、ただ相手の近況を聞き、平穏無事に安堵し、小さな幸せに喜び、少し昔話をして、最後は相手の大きな大きな幸運を祈り捧げる。そしてフィクション、ノンフィクションかかわらず、その後程なくして彼は天国に向かうのだ。

20年以上前に中学の国語の授業で出会ってから、ずっとその存在はどこか頭の片隅にあり、時々ふと思い出してはストーリーをおさらいするというような感じだった。ただその度に、自分の心の中で、ルロイ修道士の存在は確実に大きくなっていた。

しかし、彼はなんとスマートなのだろうか。彼の心の葛藤や臨終の苦しみなどを尺測る事は到底出来ないが、この世に一切の未練が感じられない。自分の為の自分ではなく、他人の為の自分とでもいうのか。

自分もこの先彼と同じように天国に行けるかはわからない。しかし、学校を卒業するように、社会人になるように、締切がくるように、試験日がくるように、寝て起きれば朝がくるように、普遍的なオートマチックなタイムリミットを迎える時と同じ精神状態で、最大限の努力を心がけて、望むような結果が出れば喜び、結果が得られなければ足らずを知り更に精進しようとするように、自身の死を迎える事が出来ればと思う。心や体もちょっとそこまで散歩に行くような身軽さがいい。きっと彼の場合は自然とそうしたのだと思う。だから憧れてしまう。自分は根っからの寂しがりやだから、同じような行動をしたところで、きっと自然には出来ないだろう。それはとても無意味な事だ。とりあえずそれを、自分の身の丈をわかっているだけで良しとしよう。

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